ギィィ・・・
そう音を立てながら開いた大扉。
そこに立っていたのはハートのJ、九眠亞夢(くみん あむ)だった。
方眼鏡と器用に束ねた二つの団子結びが特徴的な、白スーツを身に纏う女だ。
なぜ親はこんなに呼びにくい名前をつけなのだろうか?
この謎は、永遠に解けることはないのだか。
それを語るのは、もう少し、先の話。
「亞~夢ちゃんっ!あんたまた胸でかくなった?いいなぁ~、私にちょっとわけてよ~。」
そう言って亞夢の肩にスッと手を回した月華は自分の胸と彼女の胸を見比べながら
ため息混じりに言った。
そのため息を、亞夢の蒼い左眼がキッ、と跳ね返す。
「いい加減にしてください。キングの前で、なんとも下品な。そもそも私はあなたの上司です。
口の利き方を改めなさい。」
無表情のままそういって、亞夢は手招きをした。
「キングがお待ちです。立ち話もなんでしょう、早く中に入ってください。」
三人は招かれた手の方に向かった。そのとき、月華は「ちぇっ」と軽くしたうちをしていた。
大扉の中には薄暗い廊下が少しだけあって、その先に、前よりももっと大きな扉が存在していた。
「どうぞ。」
亞夢がそういったので、春水が力いっぱい扉を開けると―・・・・
「なーにやってんだこのクソエース共がっっっ!!!」
その罵声と共に飛んできたかんざしを春水がスッと身を翻し避けたので、その後ろにいた
琉瑠が「あいたっ」と小さく声をあげる羽目になった。
「・・・ハートだというのに上品も下品もあったもんじゃないその性格、なんとかならんのかキングよ?」
春水がピンクの派手な造花がついたかんざしを拾い上げて、キングに向かってヒュッと投げる。
それを器用に中指と人差し指の間で受け止めて、
「お前のその無駄な運動神経もどうにかしろ、春水」
「無理じゃの。我にどうにもするつもりがないのじゃからな。」
そう言ってクック、と笑う春水を激しく睨み付けた。
「ひぃ~、相変わらず怖いねぇ、キングは。」
「はっ、ほざいてろ、いつまでたっても昇進しない月華みたいなやつは。」
「蘭音様、それは自分でも同じでは?」
・・・亞夢の突然の突っ込みに、場の空気が一瞬凍る。
「まぁ、あれだ。とにかく、お前ら自分たちがしたことを、しっかり理解してんのか?」
蘭音はさっさと話題を変えて、先程までの気迫を取り戻した。
「任務が終わったら早く帰ってこいって何度言えばわかる。」
「え~、帰ってこようとしてたよ~。ただ、帰りに遭遇しちゃったから、運命を感じちゃってね。」
月華が気迫に屈することなく、頭をぽりぽりと掻きながらてきとうに返事を返した。
その問いに蘭音は一度大きくため息をついた。
そしてめいっぱい息を吸い込み―――・・・
「勝手なことすんな!!!!!大体お前たちが倒した悪霊は5・6・7部隊が始末するはずだった
桜任務なんだよ!!!!!!」
「・・・蘭音さま、お静かに。」
キィィィィン、と、室内が蘭音の声に共鳴した。
耳を塞いでいた一同が静かに手を離すと、亞夢が何事もなかったかのように
すました声でそう告げた。
そしてコーヒーを二杯、自分の分と蘭音の分を机において、一口飲んだ。
蘭音がそれを一口で飲み干して、プァーッと20代の女性とは思えない声をあげた。
「とにかく、お前たちエースの任務は菊任務以上とされてるんだ。
お前たちが任務をさぼってヘボ任務に手をつけてるおかげで、ボス隊と8・9・10の仕事が
山積なんだよ、わかるか?あ、亞夢、おかわり。」
そう言って蘭音が亞夢にカップを渡したとき、受付からのパイプ―社内電話のようなものだ―が鳴った。
その音は、これから起こるすべてを暗示するかのように、空気を切り裂いた。
next....
~~~♪のササヤキ~~~
人って忘れるものだね!!
初期設定の琉瑠の字とか、ボス隊それぞれの名前とか、
任務の位とか、全部忘れて設定見ながら書く羽目になったよw
・・・がんばるよ。うん、がんばるから怒らんといて・・・・。
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リアとものユーフォ吹きだよ。
というよりさやかだよ~
小説素晴らしいね・・・・・。